マネースクエアがYouTubeで配信している「トラリピ運用で大切なこと」は良い動画です。
この動画を見ると、トラリピの特徴が良く分かります。



ただ、この動画には「ん?」と思う部分が2か所あります。

20年、30年といった長い期間運用しないと、元本割れするリスクはなくならない

説明のためのイメージなので仕方がないとは思うのですが、合計損益が半年間マイナスになったあとは、合計損益がマイナスになることがないグラフで説明がされています。
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元本割れする可能性は実現損益が入金額と同額になるまで続き、リスクを抑えた運用をしている場合、元本割れする可能性がなくなるまでには20年、30年といった時間が必要です(ロスカットされても値が飛ばない限り必要証拠金が残るので、厳密には実現損益が入金額と同額になるまでではありませんが)。

小さな実現損益をコツコツ積み上げても、ひとたび相場が大きく動くとドカンと大きな含み損を抱えるのがトラリピ。
また、相場が大きく動かなくても、設定レンジの中央から価格がジリジリ遠ざかる状態になると、含み損は指数関数的に大きくなります。

2019年10月に運用を開始して以来、EUR/JPYの合計損益はマイナスになることが一度もなかったのですが、ここのところEUR/JPYの価格がゆるやかに上昇し続けているので、先月は初めて合計損益がマイナスになりました(運用開始1年半後)。
このまま上がり続けると、EUR/JPYの価格の上昇はゆるやかであっても、含み損は急激に大きくなります。

動画の「仕組み上、トラリピは開始してしばらく、マイナスが続くことがあるのです。」という説明はあまり適切ではありません。
このグラフを使ってこういった説明をすると、「しばらく」=「トラリピでの運用を始めて半年くらい」は合計損益がマイナスになる可能性があるけれど、それ以降は大丈夫、と誤解される恐れがあります。
「仕組み上、トラリピは実現損益と入金額が同額になるまでの間、元本割れする可能性が常にあります。」といった観点での説明もすべきです。

為替の大きな値動きを狙うのがトラリピ

動画の「めったに来ない、為替の大きな値動きを トラリピは、ねらいません。」という説明もあまり適切ではありません。
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「為替の大きな値動きを狙わない」=「狭いレンジで運用して適切に損切りを行う」ですので、それは上級者の運用手法です。

相場観がない初心者は、大きな値動きがあっても耐えられる広いレンジで運用すべきです。
広いレンジで運用した場合、トラリピによる資産運用(資産を大きく減らすリスクがある運用手法)を続けてもいいのかどうか悩むほど、普段の実現損益の積み重なりは小さいものになります。
大きな値動きがあるときこそが稼ぎ時なのに、なぜ「為替の大きな値動きは狙わない」という説明をしているのか不思議です。
利用者の多くは、ロスカットされない程度の大きな値動きがあることを願っています。

為替の大きな動きは「めったに来ない」ものではなく、数年に一度は来るものでもあります。
コロナショックという、それほど大きくはないショック相場であっても、リスクを取り過ぎたベテラントレーダーがロスカットされて退場したという現実があります。
「為替の大きな値動きを狙わない」ではなく、「為替が大きく動いてもロスカットされない資金量で運用する」という観点での説明にもっと時間を割くべきです。
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動画でも「結果を急いで、ハイリスクな設定にしないこと」と注意はしていますが、これはとても大切なことなので、もう少し丁寧な説明が欲しいです。